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「坊ちゃん、朝から旦那様のお手伝い大変でしたでしょう」 「タナハ、何回も言うが俺はもう成人したんだぞ」 「あらやだ私ったらつい。ごめんなさいリック様」  パーティーから1週間後の昼。俺は朝から父上の仕事を手伝い、帰ってきたところだった。ちなみにタナハはいつまでたっても俺のことを『坊ちゃん』呼ばわりだ。 何回訂正しても直らないところをみると、もう一生このままなんじゃないかと半ば俺も諦めている。 「そうだ、今日この後クレア様が遊びにいらっしゃるそうですよ。最近仲が良いみたいですね」 「うるさいな、ほっとけよ」  タナハの言葉を適当に受け流して俺はソファに腰掛ける。すると部屋のドアを開けて執事が顔を出した。 「リック様、失礼いたします」 「なんだ」 「リック様にお客様がいらっしゃっているのですが…」 「あら、もしかしてクレア様がもういらっしゃったのかしら?」 「なんだ、そうなのか?」 「いえ、そうではなく…」  どこか話しにくそうに執事が廊下をちらちらと振り返る。 「なんだ、はっきり言え。誰が来たんだ」 「私ですよ、リック。キース・メルクリアです」  執事を押し退けるようにして突然部屋に男が入ってきた。その男は見間違いでもなんでもなく、明らかにキースだった。しかもまた堂々と偽名を名乗っている。 タナハが小さく「いい男」とつぶやいたのが聞こえたがそれは無視してキースを見やった。 「お前何して…!?」 「申し訳ありませんリック様。お名前を存じ上げなかったので、一度リック様に確認を取ってからと思ったのですがこの方が強引に」 「嫌だな執事さん。私はリックの友人ですよ。ねぇ、リック?」  にこにこと笑えみを浮かべて俺に同意を求めてくる。俺が二の句を告げずにいると、キースはひとりで勝手に話し始めた。 「いや実はね、せっかくだからしばらくこの街に滞在しようかと思ってね。改めて挨拶に、というかまぁ、遊びに来たんだよ。迷惑だったかな?」 「………」 「おや、言葉も出ないほど嬉しいかい?そんなに喜んでもらえるとは思わなかったよ」 「………勝手にしろ」  その後、キースは本当にこの街に滞在し、偽名を使って堂々と俺に会いに来るようになるのだが、それはまた別の話、というやつだ。 【END】 あとがき