「よぉ、リック。こっちこっち」
定食屋のある通りに差し掛かると、俺の姿を見つけてマイクが声をかけてきた。長身で活発なマイクと、ひょろひょろしていてなんだか弱そうなウィルがいつもの通りに面した
テーブルについてこちらを見ている。俺たちの指定席だ。
「おばさん、リックにも」
「はいはい、いつものね」
ウィルが定食屋のおばさんに声をかけると、最後まで言い切る前におばさんが笑顔でうなずいた。この定食屋は俺たちの行き着けの店だ。小さい頃からよくこの店に3人集
まっては、たわいない会話をしていた。俺たち貴族を毛嫌いする人がほとんどのこの街で、おばさんとこの店の常連客は俺たちを笑顔で迎えてくれる数少ない存在だ。
俺が椅子に座ると、マイクが話しかけてくる。
「リックお前、パーティーの準備はもういいのか?」
「ん?あぁ、別に大丈夫だろ。服の合わせも済んだし、あとは前日と当日の会場準備くらいだから」
「自分の誕生日なのにいろいろ用意しなくちゃいけないなんて、結構面倒だよね」
「しょうがない。そういう場でいろんな人脈を作っていくのも大切だって父上が言っていたからな。それを考えれば、今回の俺の誕生パーティーは大きなイベントだ」
俺は今、3日後に控えた自分の誕生パーティーの準備に追われていた。15歳の誕生日。15歳で成人とみなされるこの国では、大きな節目となる日だ。
あれからもう、5年たつことになる…。
「あ、そういえばキースの噂聞いたか?」
「え?あ、あぁ何だ?」
まるで心を読まれたかのような絶妙なタイミングのマイクの言葉に、俺は一瞬戸惑った。
「キースだよ。義賊のキース。何年か前にここら辺でも出ただろう?」
「会ってみたかったよね」
「だな。結局隣街での噂だけで、この街までは来なかったし。リックの家に来るかと思ったのにな」
「…あぁ、そうだな」
5年前、俺がまだ10歳だった頃の話だ。金持ちの家から金品を盗んでは市民にばら撒き、市民から英雄視されている義賊のキースという男がいた。
その男が、5年前のあの日、俺の屋敷へやってきたのだ。その夜屋敷には両親は不在で、俺とキース、2人だけで誰にも知られることのない話をした。
次の日、俺は屋敷に盗みが入ったと大騒ぎになることを覚悟していた。しかしどうやら、キースは取るに足らないものしか盗んでいかなかったようで、誰もキースが来たことに
気がつかなかったのだ。
キースは去り際に、こう残していった。
『…そうだな、また5年後か10年後ぐらいに来るからよ。だからそれまで俺が捕まって処刑されるなんてことがないように、今日のことは他言無用で頼むぜリック』
盗人が言ったあの言葉が真実かどうか俺にはわからないが、今年で5年だ。最近どこか心が落ち着かないのは、俺が成人するからか、それとも…。
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