「そうだ、変わらないと言えば。お前の俺に対する評価はどうよ?5年前は俺の言うことなんて聞く耳もたねぇ、ってかんじで“コソ泥”だのなんだの言ってくれたけどよ」
「ん?」
「あれから5年、お前も世の中のこととかいろいろ勉強しただろ。親父さんの仕事の手伝いもしてるみたいだし。今のお前は俺みたいなやつのことどう思う?」
キースが妙に真剣な顔をするので少し考えてみた。この5年、父上の仕事を手伝うようになりたしかに俺の世界は広がった。実際に目にしてはじめてわかる現実も
あった。だが、
「さぁな。この5年で俺も成長したが、その間にお前のことなんてこれっぽっちも考えなかったからな。知ったこっちゃない」
「うわ、そりゃないだろ…」
正直なところを話す気になれなくて、嘘をついた。キースは苦笑しながら自分の頭をくしゃくしゃとかいている。
「…まぁいいや。とりあえずクレアちゃんにそれ渡してやれよ。まだ探してるぜきっと」
「言われなくてもそうするよ」
「あぁ、でも俺が盗ったって言うなよ。キース・メルクリア伯爵はそういうキャラじゃないからな」
「…じゃあな」
「おう」
最後に短く挨拶を交わして俺たちは別れた。はやくクレアにネックレスを渡してやらなければ。
中庭から屋敷の中へと戻り、クレアを探して人をかきわけて進む。
「いた!」
クレアの姿を見つけて思わず声をあげてしまう。会場の隅でさっきのようにきょろきょろと辺りを見回している。
「クレア!」
「リック…」
「探してたんだ、これ渡そうと思って」
俺はハンカチの包みを差し出した。クレアは不思議そうにそれを受け取り、中を確認する。
「リック!これ…」
クレアは何かを確かめるかのようにネックレスをそっと指でなでた。
「お前のだろ?なくして困ってたんじゃないか」
「これ、どこで?」
「ん?あぁ、えっと…タナハ!タナハが、さっき拾ったって言って持ってきたんだよ。お前のじゃないかって」
とっさにタナハの名前を出してごまかした。あとでタナハに根回しをしておかなくては。
「よかった。気がついたらなくなってて、どうしようかと」
クレアはネックレスを見下ろして心底ほっとしたようなため息をついた。
「なぁ、ひとりで悩まないで何かあったら言えよ。力になれることがあるかもしれないだろ。少しくらい頼ってくれたって、いいだろ」
「リック…」
「そ、それともあれか。俺はそんなに頼りないか。でも俺もな、今日で成人だ。大人だ。これからもっと努力して頼れるやつになるから」
「…ってるよ」
「え?」
ぼそっとクレアが何かをつぶやいた。なんだ、なんて言った?
「もうなってるよ。…ありがとう、リック」
クレアが俺の目を見て、はっきりと、そう言った。そのときのクレアの表情が、いつもの活発な彼女からは想像できないくらいどこか女性らしい雰囲気をまとっていて、
俺は何も言うことができなかった。
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