「……何でしょうか?」
“あの御方”の前で片膝をつく。
「うまくいったようだな」
トウゴのことだ。彼は無事に戻れた、と聞いた。
優しい顔を思い出して懐かしくなった。
「お褒めにあずかります」
「何を感じた」
「え…」
「何を感じたのか、と聞いているのだ」
――こんなことを聞かれたのなんて初めてだ。
正直に、言ってみようか。
「生きるのも、良いことだな、と」
「まことか?」
「あっ、いえ、私がそんなことを言うなんて厚かましいってわかってます」
「そんなことはない」
“あの御方”の声が少しやわらかく聞こえるのは気のせいだろうか。
「ならばもし―彼と同じ選択が与えられたとしたなら、生を選ぶか」
生か、死か。
あの頃の私にとってそんな問いの答えは一つしかなくて。でも。
「……はい」
「では、帰るがよい。元の世界へ」
「え……?」
体の周りをあの時の光が包み込んで、周りの景色が揺らいでくる。
「これは――?」
「ナンバー9。そなたにきちんとした名前が与えられなかった理由を考えなさい」
まさか。
「こことあちらの時間軸は違う。彼も手術が終わったその瞬間意識が戻ったそうだ」
信じられない思いが、こみ上げてくる。
でも、もしも、そうだとしたならば―…
「ありがとうございます―!」
「君はまだ若い。生をまっとうしなさい、明陽」
“あの御方”が笑ったような、そんな気がした。
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