1 2 3 4 5 6 7
「……何でしょうか?」 “あの御方”の前で片膝をつく。 「うまくいったようだな」 トウゴのことだ。彼は無事に戻れた、と聞いた。 優しい顔を思い出して懐かしくなった。 「お褒めにあずかります」 「何を感じた」 「え…」 「何を感じたのか、と聞いているのだ」 ――こんなことを聞かれたのなんて初めてだ。 正直に、言ってみようか。 「生きるのも、良いことだな、と」 「まことか?」 「あっ、いえ、私がそんなことを言うなんて厚かましいってわかってます」 「そんなことはない」 “あの御方”の声が少しやわらかく聞こえるのは気のせいだろうか。 「ならばもし―彼と同じ選択が与えられたとしたなら、生を選ぶか」 生か、死か。 あの頃の私にとってそんな問いの答えは一つしかなくて。でも。 「……はい」 「では、帰るがよい。元の世界へ」 「え……?」 体の周りをあの時の光が包み込んで、周りの景色が揺らいでくる。 「これは――?」 「ナンバー9。そなたにきちんとした名前が与えられなかった理由を考えなさい」 まさか。 「こことあちらの時間軸は違う。彼も手術が終わったその瞬間意識が戻ったそうだ」 信じられない思いが、こみ上げてくる。 でも、もしも、そうだとしたならば―… 「ありがとうございます―!」 「君はまだ若い。生をまっとうしなさい、明陽」 “あの御方”が笑ったような、そんな気がした。 NEXT