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「……きひ、明陽!」 ぼんやりと誰かの声が聞こえてきて、瞳をゆっくりと開ける。 「明陽!!」 「あか…さん?」 そこには涙でぐしょぐしょの顔があって、思わず声を洩らす。 「どうしたの?」 「この、馬鹿っ!」 お母さんの隣には真っ赤に腫れた目と吊り上がった目のお姉ちゃんがいて、 失礼だけどとても恐いなんて思えない。 「ごめんな、アキヒ。ワタシのせいだ」 そして、そこにはお父さんがいた。 「ワタシみたいな外国人のせいでアキヒが傷ついてたなんて……」 甦る記憶。 ―お母さんは外国人のお父さんと結婚した。 その間に生まれたお姉ちゃんはふわふわ栗毛だったけれど、私は突然変異で銀髪に。 現実ではありえないようなその色に周囲の人達は畏れを抱き、隔てた。 それは必然のことだったのだろうか? それでも私はやっぱり辛かったし、中には執拗なものもあって、このまま生きていたって何の意味もないと思ってた。 でもその全てが私のせいではなかったと言い切れるだろうか? きっと、私も自分を特異な存在だと思うことで周囲を隔ててはなかっただろうか。 実際、自分は周りと違うことにやけになって、いつのまにか男言葉を使うようになっていた。 それで自分を馬鹿にする奴らを見下したような気分になって。 でも結局一番辛かったのは自分だった。 「違うの、お父さん。わかしが、馬鹿で、何も知らなかっただけなの」 生きていれば何かが変わるかもしれない、それを信じようとせずに自分からなんて動こうとしてなかっただけなの。 「そうよ……」 泣き腫らした目のお姉ちゃんが言う。 「あんたは馬鹿よ。あんたに生きてて欲しいって思う人がいるってこと…… 忘れてんじゃないわよ!」 そう、近くにいて、一番大切な存在。 それすら忘れてて。 「ごめんね、お姉ちゃん、お母さん…お父さん」 笑えたかな。精一杯のごめんなさいとありがとうの気持ち。 もう一回、頑張ってみるね。 どうやら私は意識不明の状態が6時間ほど続いたらしい。 その間魂が体を離れ、『中界』へと辿り着いたようだ。 そこで過ごした時間は私にとっては数年。その時のことを思い出す度今でも懐かしくなる。 あの時の私にとってはこの世界は真っ黒で、『中界』に辿り着き、“あの御方”が手を差し伸べてくれた時、 世界は真っ白に思えたんだ。 でも、生きていないと知ることのできないこともあると教えてくれたのはトウゴだった。 あの後学校へ行ったら“ごめん”の紙と花束が机に置いてあった。 銀髪を染めようか迷ったけれど、それはやめておいた。 いつか、彼に、トウゴに、会えるかな。私の銀髪を見たら、気づいてくれるかな。 きっと、会える。 だって、人生には何が起こるかわからないんだから。 end* アトガキ