目を開けた時、世界は真っ白で。
ああ、やっと幸せになれるんだ、って思ったんだ。
*
「今度の仕事はこの青年だ」
目の前のスクリーンに大きく映し出された顔。
人懐っこく笑う青年の顔。
「また若者ですか」
「ああ、でもこの青年は今までとは少し違う。この青年が死にたくなるのも無理はない。
まあ、『そうなるか』どうかはお前次第だ」
“あの御方”はこう話す時も無表情なのだろうか。
“あの御方”は顔を隠してしまうからなんとも言えないが、笑い顔など到底想像できない。
「いいか、ナンバー9。場所はお前の生まれ故郷、ジャパンだ」
「了解」
「うわー、変わってないなー。クラクションのうるさいこと」
長い銀髪が空で揺れても、下の人間達は気づかない。
もちろん、姿は普通の人間には隠している。
でも、もし隠していなかったとしても気づかないんじゃないか、と思う。
人間なんて自分の見たものしか信じないし、見ようともしない。
「しかも、空気も更に悪い」
顔をしかめ、手をひらひらと振り、空の上で一蹴りすると次の瞬間そこへとたどり着いた。
「此処、か」
着いたのは少し黄ばんだ壁の建物。
入り口には大きく『○○病院』の文字。
それを横目で流し、開くことのない自動ドアを難なくすり抜け中に入る。
――久島 十吾
その名をこれまた難なく探し出してその病室へとほんの数秒で行き着く。
求める場所へは想像すればすぐに行くことができる。
死んでから手に入れたその能力はとてつもなく便利だ。
再び扉をすり抜け、そこで眠っているはずの青年に目をやる。
いた。
大きく開け放した窓からの風を気持ちよさそうに受け、久島十吾は本を開いていた。
まだ私の存在には気づいていないようだ。
その間に辺りを見渡す。
ベッド、カーテン、机、それから窓。何にもない部屋。広い個室。
何と呼びかければいいだろうか。
何と言うか散々迷った挙句、ありのままに声をかけることにした。
「おい、そこのお前」
すこしぐらい恐怖を抱いてもらった方が話は進みやすいものだ。
本から目を上げたトウゴは予定通りこちらを凝視したまま動かない。
それはそうだろう。
いきなり見知らぬ人間が誰もいないはずの部屋に現れたら誰だってそうなるだろう。
しかもその人間は銀髪とくる。
だけど、次の言葉に驚いたのはこっちの方だった。
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